女性のライフステージには、妊活期、妊娠・出産期、更年期などがあり、それぞれの段階でさまざまな健康上の悩みに直面します。たとえば、妊活期には基礎体温の記録や排卵日の把握、妊娠・出産期には心身の著しい変化や負担、更年期にはホットフラッシュやメンタルヘルスケアなどがあり、ライフステージごとに異なるサポートが必要です。今回はこのような女性特有の“ライフステージ別の健康課題”について考え、解決策のひとつである「フェムテック」の商品やサービスをご紹介しましょう。
女性のライフステージとは
まずは女性のライフステージを、小児期・思春期、性成熟期、更年期・老年期に分けて、解説しましょう。

小児期・思春期
小児期は、身体を大きく発達させるための成長ホルモンが多く分泌される段階です。女性ホルモンはほとんど分泌されません。
子どもが大人へと成長するための移行期間にあたる思春期は、女性ホルモンの分泌量が増え、生殖機能が発達していく段階です。年齢でいうと8~18歳ごろで、その間に多くの女性は第二次性徴による心身の変化や月経の開始を経験します。
性成熟期
性成熟期は、女性の一生のうち女性ホルモンがもっとも順調に作用する段階です。ホルモン分泌量が多い18~37歳くらい前期から、分泌量が緩やかに低下する37~45歳くらいの後期で二段階に分かれます。
性成熟の前期は生殖能力が高まり、月経に関連するさまざまな症状を経験する人が多くなります。加えて、就職や結婚、妊娠・出産、育児と仕事の両立など、ライフイベントや生活環境の変化が重なり、心身ともに影響を受けやすい時期です。
一方後期になると、子宮筋腫や子宮体がん、乳がんの発症リスクが高まります。また、年齢的な要因から、妊娠を希望する場合は不妊や高齢出産が課題となりやすいでしょう。
性成熟期のうち、特に30~40代で子宮頸がんの発症がピークとなります。一般的に「がん」は高齢者に多いイメージがありますが、子宮頸がんは若い女性に多い特徴があります。
更年期・老年期
更年期は月経が完全に止まる閉経の前後10年間にあたり、女性ホルモンが急激に減少する時期です。
更年期には、ホルモンバランスの急激な変化により、イライラや不眠、ほてりなどのさまざまな症状が心身ともにあらわれやすくなります。症状には個人差があるものの、日常生活に支障が出るようなケースも珍しくありません。また、この年代は生活習慣病やがんの発症リスクが高まる時期でもあります。
更年期以降に迎える老年期は、女性ホルモンの分泌がほとんどない段階。身体のさまざまな部分で老いを感じやすくなります。老年期になると更年期障害が改善し、体調は安定してきますが、生活習慣病のリスクが更年期よりも高まります。
女性が直面する主な健康課題

続いて、女性が直面する健康課題を掘り下げていきましょう。
月経に関連する心身の負担と影響
<月経痛・PMS>
月経痛(生理痛)は、生理直前から生理中にかけて起こります。主な症状は下腹部や腰まわりの痛みなど。人によっては、日常生活に支障をきたす月経困難症の症状があらわれることもあります。
PMS(月経前症候群)は、月経の1週間前くらいからあらわれる不快症状のこと。腹痛をはじめ、乳房の張りや便秘、むくみ、気分の落ち込みなどの症状があらわれます。心身にさまざまな症状が出るPMSは、月経がはじまると同時に消失する点が特徴です。
<不規則な生理周期>
月経周期日数は25~38日が正常とされており、当てはまらないケースを月経不順といいます。
続発性無月経…3ヵ月以上月経がない状態
希発月経…月経周期が39日以上空く状態(90日以内)
頻発月経…月経周期が24日以内の場合
月経不順の主な原因は、ストレスや過労、過度なダイエットなど。ただし、健康な人でも月経が1週間程度遅れることがあります。
<基礎体温管理>
基礎体温は “安静時の体温”のこと。約1ヵ月の周期で変動する女性ホルモンの状態や排卵の有無、月経不順、妊娠などの変化・トラブルを知る手がかりになります。
<心身の調子やパフォーマンスへの影響>
月経中は下腹部痛などの症状もあり、精神的に憂鬱になりやすい時期です。月経が終わるころには、気分の落ち込みが戻ってくるといわれています。
<仕事・学業との両立>
心身にさまざまな影響を及ぼす月経中は、仕事や学業に何らかの影響を感じる人も多いでしょう。仕事や学業との両立には、自身の月経周期や症状の程度をきちんと把握し、対策を考える必要があります。
妊活・妊娠・出産に関する心身の負担と影響
<不妊治療の身体的・精神的負担>
不妊治療では、検査や治療のタイミングが月経周期に合わせて設定され、通院が長期にわたることも多い特徴があります。内診台での診察や痛みを伴う処置などのストレスにくわえ、妊娠するかわからない不安や職場に話しづらい事情など、心身・経済的な負担が大きいとされています。
<妊娠中のつわりや体調変化>
妊娠初期には、つわりと呼ばれる消化器症状があらわれます。主な症状は、吐き気や嘔吐、食欲不振など。倦怠感や体重減少を伴う場合もあります。そのほか妊娠経過とともに、貧血や便秘などさまざまな体調の変化が起こるとされています。
<産後の心身の回復>
産後は身体を元の状態に戻すため、安静と睡眠を意識することが大切です。産後3~4週間を目安に簡単な家事をはじめ、徐々にできることを増やすのは産後5週間以降にしましょう。
また、産後はマタニティブルーや産後うつ病の症状が出ることもあります。主な症状は、気分の落ち込みや不眠、食欲不振など。情緒不安定になりやすい時期なので、身体とあわせて心の回復にも目を向けましょう。
<仕事との両立や復職に関する課題>
妊活・妊娠・出産・育休においては、仕事との両立や復職に難しさを感じる人も多いでしょう。現状を改善するには職場の協力・理解を得る必要があります。
<メンタルヘルスケア>
メンタルヘルスケアとは、“全ての働く人が心身ともに健康で、いきいきと働けるような気配りと援助をすること、またそのような活動が円滑に実践されるような仕組みを作り、実践すること”を指します。
妊活・妊娠・出産を経験する女性も“全ての働く人”に含まれており、企業には従業員ごとの状態にあわせたケアが求められます。
更年期に関する心身の変化と影響
<ホットフラッシュなどの身体症状>
更年期には、更年期症状と呼ばれるさまざまな身体症状があらわれやすくなります。代表的な症状でもあるホットフラッシュをはじめ、自律神経の乱れによる冷え、疲労感、肩こり、婦人科症状の異常など、複数の症状に悩む女性も少なくありません。
これらの症状が日常生活に支障を及ぼすレベルになると、「更年期障害」として治療が必要な状態になります。
<メンタルヘルスの変化>
更年期には、身体だけでなく精神にも症状があらわれます。症状例は、イライラや不眠、情緒不安定、意欲低下など。症状の程度や原因には個人差があるとされています。
<骨密度低下などの加齢変化>
閉経後は急激に骨密度が減り、骨粗しょう症のリスクが高まります。骨粗しょう症は女性に多い傾向にあり、加齢や女性ホルモンの欠乏によるものは“原発性骨粗しょう症”に分類されます。
<仕事や日常生活への影響>
日常生活に支障をきたす更年期障害は、生活の質の低下につながります。今までにないミスやトラブルが起こったり、イライラすることが増えたりするなど、仕事や日常生活への影響はさまざま。気になる症状があれば早めに婦人科を受診し、更年期との付き合い方を探すことが大切です。
<生活習慣の見直しの必要性>
生活習慣の乱れは更年期の症状悪化につながるとされています。運動・睡眠・食事のバランスを整え、規則正しい生活送ることが更年期をおだやかに過ごすためのポイントです。
個人・企業ができる健康課題への対策とサポート

女性の健康課題には、個人・企業の両方が対策とサポートを考える必要があります。
個人でできる対策
個人でできる対策として、生活習慣の改善が挙げられます。運動習慣を持つこと、栄養バランスの取れた食事の意識、適正体重の維持、たばこ・アルコール対策など、普段の生活を整えることを意識しましょう。
また、定期的な健康診断を受けることも個人でできる対策の1つ。生活習慣病をはじめ、さまざまな病気の早期発見と治療を心掛けましょう。
働く女性の経済損失は年間3.4兆円に!
女性の社会進出や少子高齢化による人手不足が進行するなか、働き手としての女性とその健康課題に国や企業からも注目が高まっています。経済産業省の資料によると、月経随伴症状によるパフォーマンスの低下や妊娠・出産にともなう離職等で、社会全体で年間3.4兆円の経済損失があるとされています。
妊娠・出産を機に離職する女性は依然として多く、その背景には育児との両立を支援する制度の不足や、制度はあっても利用しづらい環境があると指摘されています。
企業としても、妊娠・出産による離職を防ぎ、従業員が心身ともに健康でその能力を十分に発揮できる職場環境づくりや支援制度の整備が重要な課題となっています。
企業に求められるサポート
<健康経営や女性活躍推進法など社会的な要請>
企業が健康経営を通じて女性の健康課題に対応することは、生産性や業績の向上につながると考えられています。
女性の働き方を見直す法律である女性活躍推進法もふまえた、働きやすい社会環境の整備、相談窓口の設置、男性もふくめた従業員のヘルスリテラシー向上などが現代の企業に求められています。
<制度や福利厚生による支援例>
婦人科検診率向上のための取り組み…乳がんや子宮頸がん検診受診料の補助、勤務時間内に検診を受けられる仕組み
女性の健康課題について相談しやすい体制づくり…女性の産業医やカウンセラーの配置
妊娠・出産などに関わる制度や支援の充実…母性健康管理のための制度やサポートの周知、不妊治療との両立支援
休暇制度の充実…生理休暇や不調時の休養を取得しやすい環境の整備
企業によって採用されている制度や福利厚生はさまざまですが、このような支援が女性の健康課題へのサポートとなります。
フェムテックではじまる新しい健康管理

「フェムテック」は、“Female(女性)”と“Technology(テクノロジー)”を掛けあわせた造語です。月経関連症状や妊娠・出産、更年期障害といった女性ならではの健康課題を、テクノロジーの力で解決へと導く製品・サービスを指すフェムテックは、女性のライフステージにおける“新しい健康管理”の選択肢といえます。
フェムテックに期待の声が集まる理由は?
女性特有の疾患やトラブルによる労働力の低下が企業・経済に与える損失は大きく、国・企業からも注目されています。
女性の健康課題を解決に導こうとするツールや福利厚生として、フェムテックの製品・サービスの導入がはじまっています。
フェムテックの主な種類と商品・サービス
最後に、フェムテックの商品・サービスの例をご紹介します。
月経 | 吸水ショーツ、月経カップ、月経管理サービスなど |
更年期 | 更年期ケア用品、サプリメント、セルフプレジャーアイテムなど |
妊娠・産後 | 妊娠・産後サポート用品、骨盤底筋サポートアイテムなど |
妊活 | 不妊治療、妊活サポートサービス、卵子凍結サービスなど |
そのほか | 健康相談アプリ、ホルモン検査、カウンセリングなど |
こちらに挙げたもの以外にも、女性のライフステージにあわせた健康課題の解決に役立つ商品・サービスが多数展開されています。
まとめ
女性のライフステージは思春期から性成熟期、更年期へと移行し、それぞれの時期で異なる健康課題に直面します。
思春期には月経の開始とホルモンバランスの変化、性成熟期には月経随伴症状や妊娠・出産に関する課題、更年期にはホットフラッシュなど、心身への影響は多岐にわたります。
より健康で生活しやすい環境を目指すために、自身のライフステージにおける健康課題と向き合うことが大切です。日常生活で不便なこと、仕事に関するお悩みのある人は、解決策としてフェムテックの商品・サービスを検討してみてはいかがでしょうか。
FEMTECH LAB資料はこちらから