(株)エムティーアイが運営するウィメンズヘルスケアサービス「ルナルナ」では、定期的にサービス内でさまざまな意識調査を行い「ルナルナ通信」として発信しています。Vol.67では、サンスターグループと共同で実施した「女性ホルモンと口腔内トラブルに関する意識・実態調査」の結果を届けることを発表しました。
最初に、有効回答者3,791名に女性ホルモンと口腔内トラブルに関係があることを知っているか聞いたところ、「理由まで知っている」7.2%、「理由は知らないが関係があることは知っている」27.1%、「全く知らない」65.8%という結果になりました。
生理前後や生理中、妊娠中などはホルモンバランスが不安定になります。特に、生理前や妊娠中には、エストロゲンやプロゲストロンという女性ホルモンの分泌が増えることで口腔内の環境が変化し、口内炎や歯周病、歯茎の腫れ、歯の痛みといったトラブルが生じやすくなります※1。

次に、実際に生理前後・生理中に口腔内のトラブルに見舞われたことがあるか聞いたところ、「ある」17.1%、「特に無い」49.8%、「わからない/覚えていない」33.1%で、約5人に1人は生理前後・生理中に口腔内の健康状態が悪化していることがわかりました。また、「ある」と回答した人に、「生理前後・生理中、いずれのタイミングでトラブルに見舞われましたか?(複数回答)」と確認したところ、「生理前」87.8%、「生理中」44.2%、「生理後」11.6%で、生理前にトラブルを抱える人が最も多い結果となりました。
排卵期を過ぎるとエストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンの分泌量が増加し、唾液の分泌が減少するため、口内が乾燥しやすくなります。また、炎症を促すプロスタグランジンというホルモンも生理直前に増加するため、歯茎が腫れたり、歯が痛んだりすることがあることから、生理前と回答した人が多いと考えられます。

続いて、妊娠経験のある人に、妊娠中に口腔内のトラブルに見舞われたことがあるか聞きました。「ある」21.3%、「特に自覚症状は無かった」56.2%、「気をつけていたので問題は起きなかった」22.5%で、生理前後・生理中の質問と同様に約5人に1人は妊娠中に口腔内トラブルが発生していることがわかりました。
次に、妊娠経験のある人に、妊婦初期は積極的に歯科健診を受診することが推奨されていることを知っているか聞いたところ、「推奨されている理由まで含めて知っている」46.1%、「理由は知らないが推奨されていることは知っている」39.0%で、合わせて85.1%と妊娠経験のある人は大半が知っている結果となりました。

一方で、実際に妊娠中に歯科健診を受診した人は59.5%、これから受診する予定の人は10.9%、受診しなかった人は29.6%という結果に。歯科健診の受診が推奨されていることを知っている人は約9割いるにもかかわらず、受診していない人が一定数いることがわかります。
そこで受診しなかった理由(複数回答)について聞いたところ、「歯痛、歯茎の出血・腫れなど自覚症状がなかった」30.0%、「妊娠中の体調が不安定で行けなかった」28.0%、「忙しくて健診を受けられなかった」23.4%ということがわかりました。
妊娠中は、女性ホルモンの急激な増加による口腔環境の変化、つわりによる嗜好変化や歯みがきが難しくなる場合もあり、むし歯や歯周病になりやすくなります。口腔内のトラブルは初期症状では気が付かないことも多いでしょう。体調が優れずなかなか口腔ケア※2に気が回らなくなってしまうかもしれませんが、歯周病は早産や低体重児出産の原因となる可能性もある※3ため、つわりがおさまる妊娠4~5カ月頃に歯科健診を受診し、比較的体調の安定した妊娠中期に必要な歯科治療を行えると安心です。

生理前後・生理中、妊娠中に口腔内トラブルに見舞われた人は、どういった症状を抱えていたのでしょうか。まず生理前後・生理中の症状(複数回答)として多かったのは、「歯茎の腫れ」50.2%、「口内炎の発生」40.1%、「歯の痛み」34.6%でした。トラブルへの対処方法(複数回答)としては「フロスやマウスウォッシュなどで口腔ケアを強化した」が最も多く33.0%、次いで「歯科医院を受診した」26.0%、「歯みがきの回数や時間を増やした」25.6%、「特に何もしなかった」22.3%という結果になりました。
「特に何もしなかった」と回答した人に理由(複数回答)を聞いたところ、回答が多い順に「一時的なものだと思ったから」75.8%、「我慢できる程度の症状だったから」50.0%、「これまでにも自然に治まっていたから」33.3%でした。一時的な症状だと思っていても、それが歯周病などの初期症状の可能性もあります。歯周病は全身疾患の原因にもなり得るため、セルフケアで症状の改善が見られない場合や、対処法が不明な場合には一度歯科医師に相談してみましょう。
妊娠中の口腔内トラブルとして多かったのは、「歯茎の腫れ」43.9%、「歯茎の出血(歯磨き時の出血など)」39.3%、「歯の痛み」32.6%でした。妊娠中にはエストロゲンやプロゲストロンの分泌が増えることで、口腔内が歯周病の原因菌などの影響を受けやすい環境になるため、こうした症状が見られることがあるようです。
また、トラブルへの対処方法(複数回答)としては「歯科医院を受診した」が最も多く74.0%、次いで「フロスやマウスウォッシュなどで口腔ケアを強化した」23.2%、「歯みがきの回数や時間を増やした」22.5%で、生理前後・生理中の設問と比較して医師に相談する選択をとる人が多いことがわかります。
妊娠経験のある人に、口腔内トラブルを防ぐために妊娠してから意識的に実践していること(複数回答)を聞くと、「フロスや歯間ブラシを使っている」42.0%、「定期的に歯科健診を受けている」34.1%、「歯ブラシや歯みがき粉を自分に合ったものにしている」30.9%、「特に無い」22.9%、「マウスウォッシュ・うがい薬を使っている」21.1%が上位にあがりました。妊娠を機に、日常的な口腔ケアを見直している人が多いことがわかります。ちょっとした工夫でも将来的なトラブルの予防につながるため、自分に合ったケアを見つけて継続していくことが大切です。

最後に、妊娠中の歯科健診や口腔ケア、生理中の口腔ケアに関する知識を深めるためにどんな取り組みがあると良いと思うかを聞きました。まず妊娠中については、「母子手帳と一緒に歯科情報を配布」65.3%、「出産準備クラスや育児イベントでの説明」41.3%、「健診のタイミングで簡単な歯のセルフチェックや説明の実施」39.8%が上位に。妊娠中は体調が不安定で、口腔ケアに特化したセミナーなどがあっても足を運ぶことが難しい場合があるため、母子手帳交付時など妊婦が必ず訪れる場所で一緒に情報を提供してほしいという人も多いようです。
また生理中については、「学校の授業での情報提供」48.8%、「健診のタイミングで簡単な歯のセルフチェックや説明の実施」41.8%、「歯科健診の補助制度や対象者の周知強化」37.7%が上位でした。自由回答としては、「生理用品のパッケージに掲載してほしい」「自治体から家にパンフレット等を投函してほしい」といった声もありました。小学校や中学校で生理について習うタイミングで、生理痛や気分の落ち込みなどの症状と同じように、女性ホルモンの変化によって口腔内トラブルも生じる可能性があることや、どのように予防・対処すると良いかを学べる環境が必要と言えるでしょう。
今回の調査では、女性ホルモンと口腔内トラブルに関係があることを知っている人は約3割にとどまり、多くの人に十分な認識がないことが明らかになりました。正しい知識をもつことは、トラブルを事前に防ぎ、実際に口腔内に不調が生じた場合の落ち着いた対処に繋がります。口腔ケアの見直しや歯科医院の受診などを通じて、自分の身体と向き合ってみてはいかがでしょうか。
※1:サンスター 女性の健康と口腔に関する調査
https://jp.sunstar.com/notice/press_release/20230301_006902.html
※2:本文中における「口腔ケア」は、自身で行うお口のケアを意味しています。
※3:厚生労働省「妊産婦における口腔健康管理の重要性」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000488879.pdf
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