行政・企業も注目!女性特有の健康課題に取り組むフェムテック事例

生理痛や更年期障害、出産・育児にともなう離職など、ライフステージごとの健康上の課題が、働く女性の就業継続や生産性を低下させている。この問題に対し、ポーラや丸井グループ、三重県桑名市など、企業・行政によるフェムテックを活用した支援事例を紹介。

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女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」。個人の利用にとどまらず、企業の人材活用施策としても広がりを見せています。

フェムテックを通じて、生理や妊娠・出産、更年期など、女性のライフステージに応じた健康管理をサポートすることで、人材の確保のみならず組織の活性化、生産性の向上が見込めます。

国も女性の就業継続支援の観点から企業の取り組みを後押しする中、本記事ではさまざまな企業でのフェムテック導入事例や活用のポイントをご紹介します。


フェムテック導入が注目される背景

フェムテックとは「Female(女性)」と「Technology(技術)」の造語です。生理や妊娠・出産、更年期など女性特有の健康トラブルをテクノロジーで解決する商品やサービスを指します。

このフェムテックが、個人だけではなく、企業や行政からも注目されている理由は何でしょうか。

女性特有の健康課題とその経済的損失

女性には、毎月の生理があり、また妊娠・出産・更年期とライフステージの変化にともなって心身の不調が現れ、仕事面では欠勤やパフォーマンス低下、離職・休職などに陥る場合があります。

こうした女性特有の健康課題による社会全体の経済損失は、経済産業省の資産によれば約3.4兆円にのぼるとされています。

少子高齢化による労働力不足がすすむ日本社会

従来こうした女性特有の健康課題は、従業員個人でケアする問題とされてきました。しかし、少子高齢化にともなう労働人口減少がすすむ日本では、たとえば新しい人材を確保するのも一苦労になってきました。

そこで、従業員一人ひとりが心身ともに健康でその能力を十分に発揮できるよう企業も後押しすることが重要なのではという考え方が広まりつつあります。

とりわけ、結婚・出産を機に離職する女性が依然として多い現状を考えると、女性従業員の健康支援は企業の持続的な成長に欠かせない取り組みといえるでしょう。

「健康経営戦略」や「女性活躍推進法」による行政の後押し

近年話題となった「働き方改革」をはじめ、国や行政も少子高齢化社会を見据えて、企業の生産性向上に向けた取り組みを後押ししています。

2022年から「女性活躍推進法」が全面施行され、また国として「健康経営」の推進も図っています。

「健康経営」は、従業員が健康に働くことが企業の生産性や仕事の意欲向上につながるとし、健康管理の支援を「コスト」ではなく「投資」として捉える経営戦略です。国ではこれを支援し、健康支援に取り組む企業を「健康経営優良法人」として認定するなどしています。

このように国・行政も後押しする中、企業でも女性の健康課題に向き合い、働きやすい環境づくりを進める動きが広がっています。

健康管理アプリの導入や専門家への相談窓口の設置、妊活・不妊治療の支援、生理休暇を取得しやすい制度設計など、フェムテックの導入を含むさまざまな取り組みが始まっています。

ただし、こうした施策を効果的に機能させるには、男性をふくめた健康リテラシー向上が必要です。

フェムテックサービスの種類と特徴

フェムテックがPMSや更年期障害など、さまざまな女性特有の健康課題に対応しています。それでは企業が導入する際には、どのような選択肢があるのでしょうか。具体的な種類と特徴を見ていきましょう。

フェムテックの種類

フェムテックが対応する女性の悩みの主な種類を以下に示します。

  • 月経

  • 妊娠産後ケア

  • 妊活

  • 更年期

  • デリケートゾーンケア

  • サプリメント

  • 婦人科系疾患

  • セクシャルウェルネス(性の健康)

企業が導入している支援策

次に、企業がフェムテックを導入する際に、どのような支援策が考えられるかをご紹介します。

  • ヘルスリテラシー向上支援

  • 健康管理・モニタリングツール

  • 医療アクセス支援サービス

  • メンタルケア・カウンセリング

  • 妊活・産後ケアサポート

フェムテックの導入・運用にあたっては、個別の商品・サービス導入の前提として、従業員の男女とも、ヘルスリテラシーを向上させることが有効な施策です。健康やフェムテックの知識を高めて理解してもらうために、健康教育プログラムやeラーニング、セミナーを活用するとよいでしょう。

月経や更年期の分野では、月経周期管理アプリや月経痛緩和アイテム、ホルモン量チェックの簡易検査キット導入で、各症状と寄り添いやすくなるケースもあります。

また、ホルモンバランスの変化によって身体的症状だけではなく、心理的な影響を及ぼすこともあります。オンライン診療や受診サポートによって、心理相談やストレスケアができる制度を確立するのも有効です。

そのほかにも、妊娠・出産・育児の選択が可能な会社づくりの推進が求められています。妊娠を望む方には妊活や不妊治療のサポート、妊娠・出産後には育児と仕事の両立支援などを整備することで女性の定着率向上も見込めます。


企業・行政のフェムテック導入事例

次に、実際に企業や行政が取り組んでいるフェムテック導入事例を紹介します。自社でフェムテックの導入を検討する際に、ぜひ参考にしてみてください。

三井不動産のフェムテック導入事例

三井不動産が自社で開発・提供している「&well」を使い、フェムテックに関するリテラシー向上を図っています。

女性の健康課題に関する動画やコラム、クイズ形式による習得度のチェックなどが可能で、「楽しみながら体調管理」を実践。また、健康経営を推進する会社にとって大きな課題である「健康無関心層」の巻き込みにも力を入れています。

そのほかには、骨密度測定や乳がん検診体験、全従業員に対するフェムテックのeラーニングを実施。社内トイレに生理用品を無料で設置する取り組みもはじまっています。

丸井グループのフェムテック導入事例

健康経営の一環として、「女性の健康」をテーマにオンラインセミナーを開催。子宮頸がんの無料検査キットの配布や、生理用品を常備して無料で提供するサービスも行っています。

また「ルナルナ オフィス」を導入し、オンラインで婦人科を診療したり、低用量ピルの処方を受けられたりするプログラムも導入。

自社の従業員だけではなく、一般にフェムテックを伝える活動として、マルイ各店舗でフェムテックイベントも開催しています。

花王のフェムテック導入事例

年間を通じて、全世代の従業員に女性特有の健康状態を知ってもらうための情報発信をしています。

また、どこからでもいつでもメールで相談できる「女性の健康相談窓口」を設置。産業医が回答し、不妊治療などの直接相談しにくい内容も、メールだと相談しやすいと好評です。

定期健診に婦人科がん検診を組み込み、がんが見つかった際には、治療と仕事の両立ができるようなフォロー体制が構築されています。

小田急電鉄のフェムテック導入事例

男性が多い職場でもあり、女性が安心して働ける職場環境づくりを目指し、フェムテックを導入。

とくに不妊治療について、男性側が上司へ相談しにくい現状があります。そこで小田急電鉄では、管理職員向けに妊活・不妊治療に関するセミナーを開催。「思い込みや無意識の偏見に気づく時間になった」と、相談される側の意識改革に取り組んでいます。

また、不妊治療や流産相談窓口「ファミワン」、産婦人科のオンライン相談「産婦人科オンライン」サービスを導入。ファミワンでは、LINEを使って不妊症看護認定看護師や助産師などの専門家からアドバイスを受けられます。

ロート製薬のフェムテック導入事例

健康経営が叫ばれる以前から、社員が健康に働ける環境づくりに力を入れていたロート製薬。全社員を対象にした体力測定や従業員の健康増進を専任に行う部署を設置し、企業が主体となって従業員の健康管理に注力しています。

また、健康診断では、乳がん検診や子宮がん検診を無料にし、隠れ貧血を調べるフェリチン検査も導入。更年期の症状に備えるためのエクオール検査も実施しています。

性別を問わず全従業員が健康を意識できるよう、健康社内通貨「ARUCO(アルコ)」を採用。日々の歩数やスポーツの実施などで健康コインを獲得でき、さまざまな用途で利用可能です。

大和ハウス工業のフェムテック導入事例

全従業員を対象に、女性の体の仕組みや月経にともなう症状などのセミナーを行い、企業全体のフェムテラシー向上を図っています。

また、希望者はオンラインで婦人科診療を受けたり、低用量ピルの処方・配送を行ったりするサービスも提供。生理休暇を「M休暇」という名称に変更し、女性が生理休暇を取得しやすい工夫をしています。

そのほかには、産業看護師が常駐する健康管理室やオンライン面談の環境を整え、女性特有の健康課題に対処できる環境の整備が進んでいます。

三重県桑名市のフェムテック導入事例

女性の健康課題に取り組んでいるのは、企業だけではありません。三重県桑名市では、住民に対して「ルナルナ」の有料機能プレミアムコースを無償提供しています。

これにより、妊活や不妊治療などの基礎知識や年代に応じた健康情報の配信、監修医師への健康相談、生理痛やPMS(月経前症候群)のセルフチェックも可能。

生理日予測や各種情報をパートナーと共有する機能などもあり、男女問わず活用できます。

まとめ

女性の社会進出や少子高齢化による労働人口減少を前に、企業には女性特有の健康課題による離職や生産性低下を防ぎ、優秀な人材が活躍し続けられる職場づくりが求められています。国や行政も「健康経営」や「女性活躍推進法」を通じてそれを支援しています。

こうした背景から、従業員のヘルスリテラシーを向上し、健康管理を支援する施策・ツールとしてフェムテックが注目されています。ただし、企業によってフェムテック導入の目的や必要な取り組みは異なります。自社でどのようなフェムテックが求められているのかをしっかり分析し、効果のある取り組みを選択する必要があるでしょう。

本記事で紹介した各社の導入事例をヒントに、あなたの会社でもフェムテック導入を推進してみませんか?


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《FEMTECH LAB編集部》

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