認定NPO法人フローレンスのグループ法人であるフローレンスこどもと心クリニックは、2025年6月より、「小学生からのピル外来(生理外来)」の診療を開始すると発表しました。同外来を通じて、初潮を迎えた小学生や思春期のこどもたちが生理の悩みに対して医療とつながり、痛みやつらさに悩まされず本来の力を発揮しながら生活を送れるようサポートします。
小児科・女性のための心療内科・不登校外来を行っている同クリニックでは、幼児や思春期のこども、親世代などこれまで幅広い層の患者を診療。生理の不調を抱えている人は多い中、患者から生理の悩みについて相談されることは少なく、声が上がりづらい悩みであることに課題を感じ、同外来を立ち上げました。
実際、思春期のこどもはつらい生理の症状を相談しづらく※1、一人で抱え込んでいるケースも多いそう。そのため適切な医療や相談先につながれないほか、同年代や親世代も同じ経験をしているため「つらくても我慢するもの」という風潮があります※2。
成人以降は生理の症状が重い場合に低用量ピルを服用する選択肢が広がる一方で、生理の痛みを我慢したり鎮痛剤で対処したりする人が多く※3、特にこどもで痛みが強い場合に「クリニックを受診して治療する」という考えはまだ根付いていません。
また、性教育の不足により「生理は治療できる」と認知されていない現状があります。その結果、親子で受診したとしても、親がピルへの不安を払拭できずこどもの服用を拒むケースもあります※4。
さらに、こどもの生理を相談できる医療機関が少ないという現状もあります。患者が医療機関に相談する際、婦人科と小児科のどちらを受診すれば良いのかわからないという問題がある一方で、病院側にも「こどもは診られない」「ピルの処方はできない」と診察・治療を断るケースがあり、思春期の生理は医療の手からこぼれているのです。
同外来では、かかりつけ医として、つらい生理の症状に対してピルをはじめとするホルモン製剤や、漢方薬、鎮痛剤などさまざまな選択肢を提示しながら、一人一人に合ったケアを一緒に考えていくとしています。
TAKE CARE WITH PEANUTS -はじめての生理ボックス – FEMTECH LAB
※1 第一三共ヘルスケア データで見る生理痛のはなしより 学校内で生理や生理痛について困った時、大人の誰かに相談しやすい環境だと思いますか?の質問に約5割にのぼる高校生が「あまりそう思わない」「そう思わない」と回答。
※2 小塩 若菜、杉田 映理(2024)「高校生の月経対処からみる日本の月経教育の課題 大阪の教師と生徒の語りから」P.67より 月経痛に対するセルフケアについて、九州の県立高校9校の3,075名に調査を行った結果、高校生がよくする対処行動で最も多いのが、「我慢する」の45%。
※3 第一三共ヘルスケアデータで見る生理痛のはなしより 20~40代の女性を対象とした調査で、生理痛のとき何らかの我慢をしている人は9割以上・その中で鎮痛剤で対処している人は6割。
※4 外 千夏、葛西 敦子(2020)「月経痛による婦人科受診に対する女子高校生と母親の意識」P.320より 婦人科外来では、女子高校生が月経痛により婦人科を受診した際に、医師からのLEPの推奨に母親が理解を示さず、女子高校生がLEP(低用量ピル)の内服に至らない事例がある。